不動産投資ニュース
有報で事業内容を把握する

FINDING FUNDS編集部です。
昨年の12月20日に行われた日銀の発表は、金融市場に大きな衝撃を与えました。日銀はこれまで金融緩和の姿勢を貫いていましたが、突如としてその方向性を転換したのです。具体的には、イールドカーブコントロール(YCC)の金利変動幅を±0.25%から±0.5%まで拡大するという内容でした。YCCについては、過去コラム『お金の流れを変える金融政策』(2022.9.8)でお伝えしていますので、併せてご覧ください。
「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、ある出来事が思っていなかったところにまで影響を与えるという意味のことわざです。YCC変更は、まさにことわざ通りとなり、私たちの生活に大きな影響を与えることでしょう。身近なものでは、住宅ローン金利の引き上げが挙げられます。
例えば三菱UFJ銀行では、1月1日から10年固定住宅ローンの金利を0.18%引き上げ、年1.05%にすると発表しています。他の金融機関も揃って金利を引き上げており、家を買おうと思っていた方々にとってはショックなニュースだと思います。「インフレも続くし、金利も高いから、しばらく新居を買うのはやめておこう。」と、買い控えが増えると建設会社や不動産会社の業績は落ち込みます。新居に備える家具や家電の購入も控えられることでしょう。そうなると各種日用品メーカーの業績にも影響を及ぼします。
YCC変更の影響は株式市場へダイレクトに伝わりました。当日の日経平均株価は27,257円で取引が始まり、日銀の発表後に株価は急落。一時840円もの値下がりとなり、結局は26,568円で取引が終了しました。その日以降もズルズルと株価は下がり、2023年の大発会(その年の最初の取引日のこと)の終値は25,716円。26,000円のラインを割り込んでしまいました。
2023年はうさぎ年ですし、せっかくならぴょんと飛び跳ねるような実り多い1年にしたいですよね。今年は大きな市場変化が見込まれますが、会社はどのようなビジネスを展開しようとしているのでしょうか。今回から5大商社をバフェット氏の投資基準に則って分析していきます。
バフェット氏の投資判断基準は下記の4つでした。
① 事業内容が理解できること
② 長期的に事業が成長すると見込まれること
③ 経営層が優秀であること
④ 株価が割安であること
①は、事業の現状把握に関する内容です。これは各社のHPや有価証券報告書(略して有報)を読むことで確認することができます。有報は、企業が事業年度ごとに作成する企業状況を公表する資料です。1年を通して事業を行った結果を株主はじめ関係者に伝える役割を持ち、会社の現状把握にはうってつけです。
有報を使って会社を比べる
有価証券報告書は下記URLをご参照ください。
伊藤忠商事 『有価証券報告書 第98期(2022年3月期)』
三井物産 『有価証券報告書 第103期(2022年3月期)』
三菱商事『有価証券報告書 2021年度(2022年3月期)』
有報の【企業情報】内にある【企業の概況】では、事業の成績として売上高などの指標を確認することができます。まずは売上高の推移を確認してみましょう。
『5大商社の売上高(2018.3~2022.3)』

2019年以降、売上高の順位に変動はなく、三菱商事が業界随一の売上高となっています。2022年は各社とも売上高が上昇。コロナ後の事業再会、未曾有の円安による取引額の上昇が要因として考えられます。ただ、これだけでは売上に対してどれだけの利益を残したか分かりません。そこで、売上高から各種費用を差し引いた利益である当期純利益の推移を見てみましょう。
『5大商社の当期純利益(2018.3~2022.3)』

売上高で他社を大きく引き離していた三菱商事ですが、2021年には丸紅に抜かされ業界第4位にまで落ち込みます。この年は新型コロナウイルスの猛威がダイレクトに伝わったタイミングで、三菱商事は特にその影響を受けています。対して丸紅は2020年に赤字だったにも関わらず、翌年には黒字転換。その後も安定して利益を獲得しています。
売上高で見ると固定化されていた順位も、利益額で見ると大きく変動していることが分かります。このように、売上高の大小だけで企業の良し悪しを判断することはできません。企業の稼ぐ力(収益力)を測るためには、売上のうち獲得できた利益の割合を見る必要があります。そこで最後に、売上高当期純利益率という指標を算出してみます。
売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高
『5大商社の売上高当期純利益率(2018.3~2022.3)』

収益力で比べると、三井物産と伊藤忠商事の2社が安定的に稼いでいるように見えます。三菱商事は規模が大きいものの、収益力はそれほど大きくないようですね。住友商事と丸紅は収益力の変動が激しいようです。
視点が変わるだけで会社の印象がガラっと変わりますね。次回のコラムでは事業別の売上高を分析し、各社の特徴を浮き彫りにしていきましょう。
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この記事を書いた人

ファイファン編集部中の人
証券会社での飛び込み営業から不動産テックベンチャーへ転職。現在は金融と不動産、ITを掛け合わせた専門家となるべく、日々奮闘中。
FUNDING FUNDSのコラムを通じて、日本全体の金融リテラシーを向上させることが夢。趣味は街歩きとカフェ巡り。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト / 不動産証券化協会認定マスター
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