不動産投資ニュース
債券の仕組みを知ろう

FINDING FUNDS編集部です。
コラムでも取り上げたアメリカの債務上限問題ですが、ギリギリのところで回避しました。6月3日、バイデン大統領が財務責任法案(Fiscal Responsibility Act of 2023)に署名し、法案が成立したからです。この法案では、アメリカ政府が今後10年間の歳出(公共事業や社会保障などの国の年間支出のこと)を抑制する代わりに、債務上限の適用を2025年1月まで停止することが盛り込まれました。バイデン大統領が所属する民主党は社会福祉や生活保護を政府が重視すべきと考えており、対する共和党は政府が市場に介入すべきではなく、自由な競争を支援すべきと考えています。そのため、債務上限問題に対する政府の考えが真っ向に対立し、期限間近のタイミングまで交渉が続きました。アメリカのイエレン財務長官は、6月5日には米国債に対する利払いができず、破綻すると警告をしていたので、危ない状況でした。
危機を脱した安堵感から、株式市場は上昇傾向にあります。日経平均株価は6月9日の終値で32,265円17銭とバブル崩壊後の最高値を更新しています。およそ33年ぶりの株価上昇となり、思わぬ投資利益が出ている方が多いのではないでしょうか。利益が出ていると、普段では検討しないような高リスクな金融商品にも手を出してみたくなるはずです。なぜなら高いリスクを背負っても今の環境なら儲けられるという根拠のない自信が出てくるからです。そういうお客さんの気持ちを見越して、高リスク商品を提案する営業員が増えているのだと思います。実際に金融庁は仕組債という特殊な商品を勧誘した金融機関を検査し、顧客側にも注意喚起を寄せています。
株式市場の環境が良いということは、金融商品を勧める側(営業員)からすると、商品を提案しやすい環境にあるということを意味します。なので、これまで以上に金融商品を提案される機会が増えてくると予想されます。商品の説明がなされたときに、自分の投資意欲、許容できるリスク量を元に投資するかを判断できる準備をしておきましょう。今回から判断に必要なモノサシとして、債券を学んで行きましょう。債券は金融商品の中でも投資リスクが低く、安全性が高い商品と言われています。なぜそう言われているのかを知るために、まずは大枠から捉えていきましょう。
債券は企業の借用証書
企業活動にとって欠かせない3大要素があります。ヒト・モノ・カネです。パン屋さんを始めたい!と思った時に、一緒に働いてくれる仲間(ヒト)、パンを作る場所や材料(モノ)、そしてお給料を支払い、材料を買うためのお金がないと、活動を始めることはできません。この3大要素のうち、カネを集める方法は大きく2つあります。1つは自分や自分の想いに共感してくれる人(投資家)からお金を集める方法。そして、もう一つが銀行や投資家からお金を借りる方法です。前者と後者の大きな違いは、一定期間後にお金を返さなければならないかどうかです。銀行からお金を借りて事業をする仕組みは過去のコラムでお伝えしましたが、今回は銀行以外からお金を借りる方法を学びます。それが債券です。
債券はお金を借りた時に投資家へ渡す証書のようなもので、企業の他、国や地方公共団体も発行しています。債券を発行する主体別に社債、国債、地方債と呼ばれています。この債券には、大きく3つの特徴があります。
1.発行から満期まで、売買できる
企業はお金をいつまで借りるのか決め、投資家は投資期間中に得られる収入(利子)と投資リスクを天秤にかけて、投資するかを判断します。債券は売買するときの最低単位が決められており、これを額面と呼びます。そして購入時には、額面金額100円に対していくらで取引するかという、発行価格という数字が用いられます。例えば、「額面100円につき100円で発行します。」というような説明がされます。投資家はこの債券を投資期間中にいつでも売買でき、その時の価格は取引市場で決定されます。額面100円につき100円で購入したものを101円で売却できれば、その差額(額面100円につき1円)が儲けとなります。
2.投資期間中に利子を受け取る
利子はお金を貸してくれた投資家に対するお礼のようなものです。投資金額に対しての割合で表示され、利率(%)で表示されます。投資家にとっては、投資をしたリターンに当たるため、企業が持つリスクに見合った内容かチェックする必要があります。
3.満期日には投資したお金が戻ってくる
債券は安全性が高い金融商品と言われ、その理由がこの特徴に表れています。債券が発行されてから、期日が訪れるまで、債券価格は取引市場の動きに左右されます。企業の魅力が薄くなれば、債券価格は下落しますし、逆もまた然りです。ただ、期日まで債券を保有すれば、投資したお金が全額戻ってきます。なので、すぐに儲けたいとは思わないけれど、安全に利子を貰いたいという投資意向の方にはピッタリの金融商品だと言えます。
次回のコラムでは、具体的な過去の債券の事例を交えつつ、専門用語のおさらいとチェックポイントをお伝えしていきます。
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この記事を書いた人

ファイファン編集部中の人
証券会社での飛び込み営業から不動産テックベンチャーへ転職。現在は金融と不動産、ITを掛け合わせた専門家となるべく、日々奮闘中。
FUNDING FUNDSのコラムを通じて、日本全体の金融リテラシーを向上させることが夢。趣味は街歩きとカフェ巡り。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト / 不動産証券化協会認定マスター
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