不動産投資ニュース
小規模不特事業の誕生により、不動産投資がもっと身近に
FINDING FUNDS編集部です。
2023年もあっという間に年末を迎えました。皆さんにとって、今年も良い年であったと思うのですが、今年を振り返ると歴史的な出来事が多くありました。スポーツでは、3月のWBCで侍ジャパンが世界一、また11月には阪神タイガースが38年ぶりに日本一と大いに盛り上がりました。経済面では、11月13日に日本円が1ドル151円80銭台と安くなり、日経平均株価においては11月20日にバブル崩壊後の高値を一時更新しました。
為替が円安に振れるということは、外貨を持っている人にとっては、日本のモノやサービスを購入する好機となります。日本政府観光局(JNTO)の調査によると、2023年10月の訪日外客数は推計値で2,516,500人であり、新型コロナウイルス感染症拡大後、初めて2019年同月の実績数を超えました。確かに、観光地では平日・休日を問わずに外国人観光客で溢れていますし、賑わいが戻ってきている印象ですよね。ホテル事業者の方から、お客さんが急増し、ホテルの空き室確保が大変という話を伺ったこともあります。
このような変化の年に、私も負けじと挑戦を始めているのが、地方での事業創出です。その一環として訪れたのが、徳島県でした。徳島県は温暖な気候と平野を中心とした自然豊かな環境が整っており、シイタケやほうれん草、さつまいも、イチゴやみかんなど、野菜や果樹の栽培が盛んな地域です。そこで農業×デジタルに取り組む事業者のお話を伺ってきました。例えば水田の管理をデジタル化する事業者のお話では、AIを活用して気温と水位と計算しながら自動で田んぼに水を注入するシステムを開発されていました。これまでは人の手で水田のバルブをひねり、田んぼに水を引いていたのが、このシステムのおかげで移動の手間がなく農作業ができるようになったそうです。このシステムを開発した背景にあるのが、人手不足です。地方に働き手がいないことで、農業だけではなく、様々な分野の事業者が困っています。
徳島県で出会った建設会社の社長とお会いした時には、空き家が増えすぎていて困っていると伺いました。そして、その社長は、地方に帰りたいと思う人に空き家を改修して提供できれば良いのだけれど、その改修費用の捻出もできないし、と困っていらっしゃいました。そのお話を伺い、私が真っ先に思い浮かんだものは、小規模不動産特定共同事業(小規模不特事業)を活用した資金調達でした。
今回のコラムでは、平成29年(2017年)に創設された、小規模不特事業の概要について学んでいきます。
小規模不特事業の登録要件
過去コラムでお伝えした通り、不動産特定共同事業は投資家の利益を守るために許可制が取られています。ただ、その許認可のハードルが高く、事業を行うことができる事業者は限定されていました。しかし、小規模不特事業の創設により、参入要件が緩和され、登録を受けることで事業を行うことができるようになりました。早速、事業を始めるに当たっての要件を見てみましょう。
一番注目して欲しいポイントは、事業者になるための手続きです。実は、役所への申請については、「届出」、「登録」、「許可」の3種類があります。行政機関内の審査内容で並べると、届出<登録<許可の順に厳しくなります。
①届出は、必要事項を記載した書類を行政機関に提出すると、書類に記載した内容に効力が生じます。審査内容に誤りがない限り、受理されます。
②登録は、書類を行政機関に提出した上で、行政機関内の帳簿に登録されれば成立します。内容に不備がない限り、行政機関は帳簿への記載を基本的には拒否できません。
③許可は、提出した書類の内容が行政機関に認められない限り、効力が生じません。許可は行政機関に裁量が与えられているため、申請自体に不備がなかったとしても、拒否される可能性があります。行政側は事業者側が法律に適した事業運営ができるかどうかという視点で審査します。
小規模第1号事業者は登録制であるため、内容に不備がない限り書類は受理されて事業を始めることができます。資本金も1,000万円からと、参加できる事業者のすそ野が広がっています。一方で、投資家から集める出資総額は1億円まで、投資家一人当たりの出資額も100万円までと限定されています。不特事業の第1号と対比すると、事業開始のハードルが緩和されている一方、投資家のリスクを限定する配慮がされていると言えます。
国土交通省が月次で発表している「小規模不動産特定共同事業者登録一覧」によると、10月31日時点で小規模不特事業者は56社います。全国各地で事業の実例が増えてきており、新規参入を検討している事業者も増えています。
次回のコラムでは、小規模不特事業が活用された実例を見ていきましょう。実は、小規模不特事業は日本全国の空き家問題を解決する糸口になる可能性を秘めています。果たして、この事業は徳島の社長の想いに応えられるのでしょうか。
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この記事を書いた人
ファイファン編集部中の人
証券会社での飛び込み営業から不動産テックベンチャーへ転職。現在は金融と不動産、ITを掛け合わせた専門家となるべく、日々奮闘中。
FUNDING FUNDSのコラムを通じて、日本全体の金融リテラシーを向上させることが夢。趣味は街歩きとカフェ巡り。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト / 不動産証券化協会認定マスター
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