不動産投資ニュース
投資リスクを減らす優先劣後構造

FINDING FUNDS編集部です。
3月は金融市場が一変する月となりました。過去のコラムでお伝えしたシリコンバレー銀行の破綻に引き続き、ニューヨーク州のシグニチャー銀行も破綻しました。資産規模は2022年末で1,103億ドル(約14兆8,000億円)と、中堅規模の銀行がまたもや倒産したことになります。銀行は預金や融資で企業と深く繋がっているため、1行の破産が他の企業に影響を与えます。まさにドミノ倒しとなるような状況を避けるべく、各国の中央銀行や主要銀行が日々活動しています。
3月16日には、クレディ・スイスがスイス中央銀行から500億スイスフラン(約7兆円)を借り入れて、資金繰りの改善に動くことを発表しました。クレディ・スイスの従業員は世界中に約50,000人、資産規模は2022年末で5,313億スイスフラン(約74兆4,000億円)と、世界有数の金融機関です。そんな彼らでも、キャッシュの確保を急ぐほど、金融市場の状況は日に日に悪化しています。クレディ・スイスは金融商品の組成、販売にも長けた金融機関ですので、仮に破綻してしまったら、関連商品の値下がりは避けられません。毎日が目まぐるしく変化しているので、このコラムを提供するときには、また違った状況となっているかもしれませんね。
ここで浮上してきた課題が金融政策の進め方です。歴史的な物価上昇に歯止めをかけるべく、各国の中央銀行は利上げを進めていましたが、今の状況が続くと金融危機が起こるのではという思惑が広がっています。直近では、野村證券が次回のFOMCでアメリカが0.25%の利下げをするという予想を発表し話題となりました。インフレを止める利上げか、金融危機を防ぐ利下げか、中央銀行にとって難しい舵取りが今もなお続いています。
クレディ・スイスは通常は破綻など考えられもしない大企業です。しかし、絶対起きないという確証はありません。リスクと聞くと、自分の身に何か危険な出来事が起きるのではと想像されるのではと思いますが、本来の意味はそうではありません。通常では考えられない出来事が良くも悪くも発生することがリスクの持つ意味です。リスクに対応する手立ては様々な商品・サービスに設けられており、不動産クラウドファンディングの投資商品も例外ではありません。事業者を許可制にしていることも1つの手立てです。今回のコラムでは、商品特徴の根幹に位置している優先劣後構造について学んでいきましょう。
優先劣後でリスクを切り分ける
例えば、1億円のオフィスビルがあり、それをあなた一人だけで購入したとします。ビルオーナーとなったあなたはビルの名称を変え、共用部を修繕し、賃貸を希望する会社に貸し出します。賃貸収入も修繕費用も全てあなたが管理をします。突発的な追加工事が必要になることも、予想していたより借りてくれる会社が見つからないこともあるでしょう。1人で不動産を購入するということは、購入後のリスクを全て自分で対処しなければならないということです。不安定な状況に心が疲れてしまうかもしれません。これに対して不特法事業では、不動産投資のリスクを細かく区切ることを可能にしました。具体的な内容を説明していきましょう。

不特法事業とは、「出資を募って不動産を売買・賃貸等し、その収益を分配する事業」でした。この中で「出資を募って」という箇所がポイントです。不特法事業は事業者だけでなく、複数の投資家からの出資も受け入れる事業なのです。不特法事業では投資家のことを優先出資者、事業者のことを劣後出資者と呼び、それぞれ異なる特徴があります。
優先出資者|不特法事業が利益を上げた場合、優先的にその利益を受け取ることができます。事業が不振に陥った場合には、優先的に出資金額が返還されます。
劣後出資者|優先出資者に対して、権利が劣後します。つまり、不特法事業が利益を上げた場合、優先出資者に利益が分配された後、残りの利益が劣後出資者に分配されます。事業が不振に陥った場合には、優先出資者に出資金額が返還された後、残った資産が劣後出資者に分配されます。
このように、事業に対する権利を切り分けることで、リスクを低減しながらリターンが得られる仕組みを作っているのです。ちなみに事業によっては、優先出資者や劣後出資者の権利や配当率などが異なる場合もあるので注意が必要です。次回のコラムでは、具体的な数字を当てはめて、優先劣後構造の投資家側と事業者側のメリット・デメリットを整理します。
この記事に関するタグ
関連するニュース

2023.06.07
管理が楽になるマスターリース契約
FINDING FUNDS編集部です。 私が一人暮らしを始めたのは社会人になってからでした。いざ住まいを探そうにも、どんな条件で探せばよいのか見当がつかず、大変な思いをしました。そして、賃貸住宅で暮らしていると小さな困りごとが次から次へと出てきます。自分で解決できる内容であれ…

2023.05.31
投資信託をチェックポイントに沿って見てみよう
FINDING FUNDS編集部です。 5月は日本企業の決算発表が集中する月です。2022年度の経営成績と2023年度の見通しが投資家に公表されるため、注目度の高いイベントとなっています。本コラムで取り上げたバフェット氏が来日し、投資先企業の経営層と会談したことが大きく取り上…

2023.05.24
投資商品としての賃貸住宅の魅力
FINDING FUNDS編集部です。 先日、日本に遊びに来たフィリピン人の友人と街を散策しました。ニールという友人は日本のウイスキーが大好きで、日本全国の蒸留所を回っています。彼から、Japan Rail Passという訪日外国人限定のチケットを使って日本全国を旅していると…
この記事を書いた人

ファイファン編集部中の人
証券会社での飛び込み営業から不動産テックベンチャーへ転職。現在は金融と不動産、ITを掛け合わせた専門家となるべく、日々奮闘中。
FUNDING FUNDSのコラムを通じて、日本全体の金融リテラシーを向上させることが夢。趣味は街歩きとカフェ巡り。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト / 不動産証券化協会認定マスター
カテゴリー
- お知らせ (11)
- 今から始める不動産投資 (12)
- 専門家コラム (22)