不動産投資ニュース
投資家を守る不動産特定共同事業法

FINDING FUNDS編集部です。
「一月いぬる二月逃げる三月去る」。年初めは時間が早く過ぎることを意味することわざですが、本当にあっという間ですよね。厳しい寒さも日に日に和らぎ、春に向かっている気がします。時の経過が早いのと同じく、不動産の投資環境も目まぐるしく変わってきています。特に2月初旬は、重要な経済発表が相次ぎました。
まず、各国中央銀行の政策金利変更です。アメリカの中央銀行にあたるFRBは2月1日に0.25%の利上げを決定し、欧州の中央銀行にあたるECBは2月2日に0.5%の利上げを決定しました。この決定で、政策金利はアメリカで4.50~4.75%、欧州で3.0%となりました。利上げをすることで物価の上昇を食い止めようとしていますが、利上げをしすぎると経済への悪影響が大きくなってしまうため、政策の舵取りが難しい局面です。
次にアメリカの雇用統計発表です。1月の失業率は3.4%となり、農業部門以外の雇用者数は前月から51万7,000人の増加となりました。直前では18万5,000人の増加と予想されていたため、意外な結果となりました。雇用者が多いということは、企業に人が足りておらず、賃金が上昇している局面とみなされます。そのため、利上げが今後も続く可能性が高くなりました。
不動産は金利と密接に関係しています。不動産を購入するときは多くの場合には銀行からお金を借りるのですが、利上げをすることで、金利負担が高くなってしまいます。そのため、利上げ局面は不動産取引が少なくなり、不動産価格は下がる傾向にあります。
さて、バブル経済崩壊時は日本の政策金利は6.0%まで跳ね上がり、不動産市況は大変な冷え込みとなりました。「失われた10年」と呼ばれる平成不況の始まりです。当時、不動産に安心して投資していた企業や個人投資家は、大変な損失を被りました。その教訓を生かし整備されたのが、不動産に安心して投資をするための法律です。それが不動産特定共同事業法(以下、不特法)です。今回のコラムでは不特法が誕生した背景から、内容までを学んでいきます。
バブルが崩壊し、状況が一変した
1980年代後半から不動産小口化商品の販売は続いていました。不特法がない当時では、信用力の低い企業でも小口化商品を販売することができました。投資家は正しく判断することがままならない内に、不動産小口化商品に投資していました。
そのような状況で、日銀が金融政策を急激に引き締めました。銀行が不動産への融資を渋るようになり、金利上昇により借入に対する支払負担が大きくなりました。ローンの返済が滞れば、担保が付けられた不動産は銀行に取り上げられます。資産を失った不動産会社は軒並み倒産し始めました。不動産小口化商品の販売会社も倒産し始め、投資家は大変な損失を被りました。
不動産に少額から投資できる小口化の仕組みは失われるべきものではありません。不動産小口化により、投資家から事業にお金が渡ることで、まちの開発が進み、人の交流が始まり、賑わいが生まれます。不動産小口化は、私たちの生活環境をより良いものに変える力を持っているのです。しかし、バブル崩壊をきっかけに、投資家の間では不動産投資への恐怖感が芽生え始めてしまいました。
そこで、企業側が業務を正しく行い、投資家が安心して不動産に投資をすることができるよう、国をあげて法整備が進められました。そして1994年に制定されたのが、不動産特定共同事業法です。これまで2回、法改正がなされていますが、まずは制定当初の内容を確認しましょう。
不動産特定共同事業の仕組み
国土交通省によると、不動産特定共同事業とは、「出資を募って不動産を売買・賃貸等し、その収益を分配する事業」と定義されています。まさに、不動産小口化商品の提供に関わる内容です。そして、この事業に乗り出す企業は許可制としました。企業は下記の許可要件を満たし、都道府県もしくは国土交通省に許可申請をすることと定められました。
<主な許可要件>
- 資本金(第1号事業者:1億円、第2号事業者:1000万円、第3号事業者:5000万円、第4号事業者:1000万円)
- 宅建業の免許
- 良好な財産的基礎、構成かつ適確に事業を遂行できる人的構成
- 基準を満たす契約約款(一般投資家を対象とする場合のみ)
- 事務所ごとの業務管理者配置(不特事業3年以上、実務講習、登録証明事業(ARESマスター、ビル経営管理士、不動産コンサルティングマスター))
不特法事業の中でも企業が行える業務の範囲が定められており、それぞれ区分されています。それが、資本金の事項にある第1号~第4号事業者というものです。要件を見ると、企業の資金面と人材面のハードルが設定されていることが分かります。十分な資金余力を持ち、商品特性を正しく伝えられる人材を揃えた企業のみが不動産小口化商品を提供できるのです。次回のコラムでは、区分ごとに行える事業の内容をお伝えしていきます。
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この記事を書いた人

ファイファン編集部中の人
証券会社での飛び込み営業から不動産テックベンチャーへ転職。現在は金融と不動産、ITを掛け合わせた専門家となるべく、日々奮闘中。
FUNDING FUNDSのコラムを通じて、日本全体の金融リテラシーを向上させることが夢。趣味は街歩きとカフェ巡り。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト / 不動産証券化協会認定マスター
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