不動産投資ニュース
賃貸物件に必要な火災保険とは?オーナー・入居者向けの保険についてそれぞれ解説
FINDING FUNDS編集部です。
賃貸物件のオーナーは、建物が損害を受けた場合に補償される火災保険に加入することが必要です。建物の補償だけではなく、施設賠償責任保険や家賃収入補償などにも加入しておくと、さらに安心でしょう。
ただ、万全の備えを確保するならば、オーナーだけではなく、入居者にも火災保険に加入してもらう必要があります。この記事では、オーナーと入居者がそれぞれ違う保険に加入する理由や、各自に必要な補償について解説します。
オーナーと入居者はそれぞれ違う保険に加入する必要がある
ここでは、なぜ、オーナーと入居者はそれぞれ違う保険に加入する必要があるのかについて「失火責任法」の観点から解説します。
「失火責任法」では原則、失火者に対して損害賠償責任を問えない
「失火責任法(明治32年に制定)」とは「原則として失火者に対して損害賠償責任を問えない」とする法律です。例えば、隣家の失火(過失)による火災が延焼して自宅が被害にあっても、原則、隣家に賠償責任は生じません。ただし、重大な過失がある場合は責任を問えます。
重大な過失の例としては、以下のようなケースが挙げられます。
・ストーブの火をつけたまま給油し出火
・てんぷら油を加熱中にその場を離れて出火
・寝たばこによる出火 ※1
万が一、第三者による原因により火災が発生しても、賠償してもらえないケースがあるため、自ら火災保険の加入をしておくことが必要です。
※1 参考:失火責任法(失火の責任に関する法律)について:徳島市公式ウェブサイト (city.tokushima.tokushima.jp)
自分の財産は自分で守ることが必要
賃貸物件で入居者の「重大な過失」により火災が発生した場合、オーナーは入居者に対して賠償責任を問えます。しかし、火災で損害を受けた後の原状回復費用は高額になるため、入居者に資力がなければ支払ってもらうのは難しいといえるでしょう。
万が一のリスクに備えるためにも、近年は部屋を貸す際の条件として入居者用の火災保険に加入するのを条件とするのが一般的です。損害が発生してもカバーできるように、自分の財産は自分で守ることが必要といえます。
賃貸住宅に必要な補償
オーナーと入居者においては、賃貸住宅に必要な補償に違いがあります。ここでは、オーナーと入居者それぞれが加入すべき火災保険について解説します。
オーナーの場合
オーナーが加入しておきたい保険は「建物の火災保険」「施設賠償責任」「家賃補償・家主費用補償」の3点です。所有する賃貸物件でオーナーが考えられる主な補償は以下の3つとなります。
- 建物の補償
- 他人の身体や財産に対する賠償の補償
- 家賃収入補償・家主費用補償
上記に関する損害や賠償などをカバーするには、火災保険に加入することが必要です。
建物の補償は、火災や自然災害などで建物が被害を受けた場合に補償される保険です。「火災」「落雷」「破裂」「爆発」の4点は多くの保険会社の火災保険で必須付帯とされています。近年では大雨による水害や地震などの被害も多いため、加入しておきましょう。
万が一、他人の身体や財産に対して被害や損害を与えた場合は賠償責任が生じます。例えば、所有するマンションの手すりが破損し、入居者が階段から落ちてケガをしてしまった場合などが該当します。相手の被害状況や損害が大きいほど賠償金額が上がるため、きちんと賠償するためにも備えておきましょう。
賃貸経営をする上での経済的リスクにも備えておくことが必要です。火災などにより賃貸物件からの家賃収入が得られなくなった場合の損失額を補償する「家賃収入」や、入居者の孤独死などで発生した原状回復費用などを補償する「家主費用補償」を「特約」で付帯できます。
入居者の場合
賃貸物件の入居者にも、オーナーとは別口で火災保険に加入してもらう必要があります。入居者に加入してもらうべき火災保険は以下の2点です。
- 家財保険
- 借家人賠償
家財保険は、入居者の所有物(家財)の損害をカバーする保険です。例えば、火災により家具や家電が消失してしまった場合などに補償されます。
なお、入居者が建物に与えた損害は、賃貸物件のオーナーに損害分を賠償しなければなりません。万が一、入居者の過失により火災が発生して居室に損害を与えた場合は、原状回復義務が発生します。原状回復費用は高額になることも多く、入居者に支払う能力がない場合は、オーナーが損害を被ってしまいます。そのため、近年では入居者用の火災保険に加入することを条件としているオーナーが大半といえます。
【オーナー向け】マンション火災保険の相場
一口にオーナー向けの火災保険といっても、建物の規模や部屋数により大きな違いがあります。例えば、ワンルームマンションの場合は年間数万円程度ですが、一棟建てのマンションでは数十万円以上になることも考えられます。
なお、地震保険は個別で契約できず、火災保険とセットで加入することになります。ここでは、マンション火災保険の相場を、戸室と共同住宅全体それぞれを比較してみましょう。
区分所有マンション(戸室)の火災保険料の事例
2LDK、3DLKクラスのマンションの戸室の火災保険例は以下の通りです。
※保険期間5年間:延床面積85㎡:M構造(鉄筋コンクリート造のマンション)
契約プラン | 水災なしプラン |
所在地 | 大阪府 |
保険金額 | 建物:1,000万円 建物地震:500万円 家財:800万円 家財地震:400万円 |
地震保険を付けた場合 | 1年あたりの保険料:16,140円 5年間の合計保険料:80,700円 |
地震保険を付けなかった場合 | 1年あたりの保険料:6,780円 5年間の合計保険料:33,900円 |
地震保険をセットすると保険料が約2.4倍も高くなります。なお、地震保険の保険期間は最長で5年です。ただし、主契約の火災保険の保険期間により契約できる保険期間が異なります。
賃貸アパート(共同住宅全体)の火災保険例
鉄骨造の賃貸アパート全体の火災保険例は以下の通りです。
※保険期間5年間:延床面積500㎡:T構造(鉄骨造建物)
契約プラン | 破損汚損なしプラン |
所在地 | 愛知県 |
保険金額 | 建物:8,000万円 建物地震:4,000万円 |
地震保険を付けた場合 | 1年あたりの保険料:84,020円 5年間の合計保険料:420,100円 |
地震保険を付けなかった場合 | 1年あたりの保険料:42,420円 5年間の合計保険料:212,100円 |
アパート全体ということもあり、地震保険もセットすると5年間で約42万円となります。地震保険をセットしない場合は約21万円(5年間)と半分程度です。
まとめ
賃貸物件のオーナーは、入居者にも借家人賠償保険に加入してもらうことが必要です。
万が一、入居者の過失により火災が発生し、貸室が損害を受けた場合に補償してもらえます。ただし、火元の部屋以外は補償の対象とならないため、オーナーは建物全体を補償する火災保険に加入しておきましょう。
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ファイファン編集部中の人
証券会社での飛び込み営業から不動産テックベンチャーへ転職。現在は金融と不動産、ITを掛け合わせた専門家となるべく、日々奮闘中。
FUNDING FUNDSのコラムを通じて、日本全体の金融リテラシーを向上させることが夢。趣味は街歩きとカフェ巡り。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト / 不動産証券化協会認定マスター
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