不動産投資ニュース
事故物件の損害賠償は遺族に請求できる?告知義務についても解説
FINDING FUNDS編集部です。
事故物件が発生すると、貸室が「心理的瑕疵物件」となるため、次の入居者が入りにくくなります。ケースによっては貸室の原状回復費用がかかる場合もあり、貸主にとっては悩ましい問題です。
本記事では賃貸借契約における、事故物件の損害賠償や告知義務について分かりやすく解説します。
賃貸物件を所有するオーナーは、ぜひ参考にしてください。
事故物件とは
最初に事故物件とはどんなものなのかについて解説しましょう。
自殺・他殺・孤独死などで入居者が亡くなった物件
事故物件とは、以下のような理由で入居者が死亡した物件を指しています。
・自殺
・他殺
・特殊清掃が必要な孤独死
病死・老衰などの自然死や、頭を打って死亡したなど日常生活で発生した不慮の死は原則含まれません。
人が日常生活を送る上で発生した死については特に問題とされませんが、自殺や他殺などによる死亡は借主に心理的瑕疵を与えると考えられます。
自然死でも長期間発見されなかったため貸室が著しく汚損し、特殊清掃やリフォームが必要になった場合も同様です。
自殺・他殺などが発生した物件については、借主が契約する際の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるため、貸主や不動産会社には告知義務があります。
事故物件に関するガイドラインが制定
国土交通省では事故物件の定義に関してガイドラインを制定しています。
ガイドライン制定前は不動産会社の判断により、人が死亡した物件は全て「事故物件」とみなすこともありました。
しかし、どんな人でもいずれは自然死を迎えることから、事故物件と定義するのは「自殺・他殺」など特殊なケースのみを対象としています。
なお、ガイドラインはオフィスなど事業用ではなく、居住用不動産が対象です。
自宅として住む場所は日常的に過ごすため、買主・貸主の心理的負担を与えないように制定されています。
参考:宅地建物取引業者による人の死の告知に関する ガイドライン|国土交通省 P6
事故物件には告知義務がある
貸室で自殺や他殺などが発生した場合、売主・貸主は買主・借主に対して「事故物件」であると告知しなければなりません。
ここでは告知義務や告知期間について解説します。
エレベーターなど共用部分も告知対象
物件の仲介をする不動産会社は、重要事項説明書で物件の瑕疵を伝える義務があります。
売主・貸主に対し、事故物件であることを故意に告知しなかった場合には、責任を問われる可能性があるのです。
事故が発生した貸室はもちろんのこと、日常的に使用するエレベーターやエントランスなどの共用部分も告知の対象となります。ただ、他の貸室で発生した事案や日常生活で通常使用しない共用部分で発生したものについては告知する必要はありません。
参考:宅地建物取引業者による人の死の告知に関する ガイドライン|国土交通省 P6
告知期間は事故発生からおおむね3年間
賃貸の場合、事故物件であることを告知しなければならない期間は、入居者の死亡からおおむね3年間です。売買の場合は取引事例などが少ないことから特に規定されていません。
なお、告知期間の3年間が過ぎても、事件性や周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案については伝えなければならないケースも存在します。
借主から問われた場合も、事故物件であることの内容について説明することが必要です。
宅地建物取引業者による人の死の告知に関する ガイドライン|国土交通省 P6
事故物件になったら遺族に損害賠償できる?
事故物件になった場合、事案の内容によっては遺族に損害賠償を請求できるケースがあります。
ここでは、事故物件になったら遺族に損害賠償できるのかについて解説しましょう。
賃貸借契約は入居者が死亡すると相続人に引き継がれる
賃貸借契約においては借主が死亡しても賃貸借契約は終了しません。建物を借りる権利=借家権は、相続人に相続されるため、賃貸借契約は入居者が死亡すると相続人に引き継がれます。
そのため、入居者の責任において発生した損害に対して所有者は損害賠償を請求できる可能性があります。
なお、入居者の死亡により事故物件となった場合、すべてのケースで遺族に損害賠償請求をできるとは限りません。
自殺の場合は遺族に損害賠償請求ができますが、他殺や孤独死・病死は入居者本人に過失がないため、請求の対象外です。
建物の所有者は家主費用特約が付いている火災保険に加入するなど、万が一の事態に備える必要があります。家主費用特約とは、孤独死・自殺・犯罪などによる死亡事故があった場合に、 原状回復費用や残置物整理費用、空室期間や家賃の値引きによる損失を補償する保険です。他殺や孤独死では遺族に損害賠償請求できないため、備えておくとよいでしょう。
遺族が相続放棄したら損害賠償できない
貸主は借主の過失による損害につき、遺族に賠償請求を行えます。
しかし、遺族が相続放棄したら賠償請求ができません。
相続放棄した遺族には損害を賠償する義務がなくなるからです。
「相続放棄された」あるいは「相続人がいない」場合には、相続財産清算人を選任して損害賠償請求を行えます。しかし、家庭裁判所へ手続きをする必要があるので、貸主は手間や費用をかけなければなりません。
損害の程度によっては相続財産清算人を選任して清算するほうがコストがかかるケースもあるため、よく検討してから実行しましょう。
まとめ
自殺を要因とする事故物件が発生した際、貸主は借主の遺族に損害賠償を請求できます。
ただ、他殺や孤独死など入居者の過失によらない死亡では、例え事故物件になっても損害賠償請求を行えません。
貸主は入居者に不慮の事態が発生することも想定し、家主費用特約などの火災保険に加入するなど日頃からリスクに備えておきましょう。
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