不動産投資ニュース
匿名組合契約と任意組合契約の違い
FINDING FUNDS編集部です。
日本政府観光局が5月17日行った発表によると、4月の訪日外客数は2019年4月と比較して66.6%、1,949,100人となりました。新型コロナウイルスの影響を避けるため、2019年実績と比較しているのですが、徐々に観光客が増えている様子が伺えます。
発表資料を詳しく見ると、2019年と比較して1~4月にかけて訪日外客数が増えている地域は、シンガポール、ベトナム、米国、中東地域の4か所でした。日本へ向かう航空路線が増便傾向にあること、ワクチン接種証明の提出措置が終了したことが、訪日外客数の増加に結びついていると考えられます。資料を読んで驚いたのが、中国からの訪日外客数の減少です。2019年の1~4月には、2,895,449人が来日していましたが、2022年の1~4月は251,600人、約90%減となっています。中国では日本行きの海外旅行制限措置や帰国時の入国制限が敷かれており、それが主な原因と考えられています。過去に大きなブームとなった「爆買い」はもう見られない状況となっています。
一方で、観光各地では訪日外国人を迎える熱気が増しており、私の所にも民泊の開発や投資の問い合わせが来るようになりました。京都のとあるホテルでは、コロナ前と比較して売上が3倍以上となったと聞きました。ホテル運営会社も運営できるホテルを探して躍起になっているようです。 不動産クラウドファンディングの商品にも民泊を投資対象としたものがあります。実は商品の仕組みを支えるものに、匿名組合契約と任意組合契約という2つの契約があります。今回のコラムでは、これら2つの違いについて学んでいきましょう。
大きな違いは、参加する事業に責任が伴うか
匿名組合契約と任意組合契約の違いを簡単に説明します。
まず匿名組合契約は、商法第535条に「当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。」と記載されています。出資をする者を出資者、その出資を受け入れて営業する者を営業者と呼びます。匿名組合契約では、出資者の個人情報が秘密にされ、文字通り匿名となります。営業者は事業を遂行し、出資者は事業における責任と出資金に対する利益を明確にすることができます。つまり、事業における損失は有限となり、これを有限責任と呼びます。
不動産クラウドファンディング事業における匿名組合契約の主なポイントは下記の3つです。
1.共同事業の目的と範囲
匿名組合契約では、共同事業の目的や範囲が明確に記載されます。例えば土地の取得、建物の建設、運営や売却に関する事項などです。
2.出資者は有限責任
匿名組合契約には、出資者が出資する金額やその比率、利益や損失の分配方法などが記載されます。出資者は自分たちの責任範囲を明確にすることができます。
3.契約の期間と解散
匿名組合契約には、共同事業が完了した後や一定の条件が満たされた場合に解散することが記載されます。解散時の資産分配方法や負債の処理方法も契約で明確にされます。
一方、任意組合契約は、民法第667条に「各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。」と記載されています。先ほどの匿名組合契約と異なり、人々が自由意思に基づいて集まり、共同で事業に取り組むという特徴があります。例えば、友人同士でレストランを開くために資金を出し合い、経営を共同で行う場合に任意組合が使われることがあります。各出資者が事業に対しての責任を持ち、その範囲は限定されません。つまり、事業における損失は無限となり、これを無限責任と呼びます。
不動産クラウドファンディング事業における任意組合契約の主なポイントは下記の3つです。
1.自由な合意形成
任意組合契約は、出資者間の自由な合意に基づいて成立します。組合員は、自身の意思に基づいて契約に参加し、組合の目的や運営方法について合意します。この柔軟性が、不動産開発や投資などの目的に適した契約形態となります。
2.出資者は無限責任
任意組合契約では、出資者が共同で事業に責任を負います。各出資者は出資金や労力を提供し、共同事業の運営や目標の達成に参画します。また、組合から得られる利益や損失は出資者間で合意に基づいて分配されます。事業に対する責任範囲は限定されません。
3.不動産への投資は現物不動産と同じ扱いとなる
任意組合契約にて不動産へ投資をした場合、各出資者が事業へ責任を持っているため、彼らが不動産へ投資をしたという扱いとなります。結果として相続や贈与における評価額は、固定資産税評価額に基づいた金額となり、相続税圧縮効果が見込まれます。
つまり、匿名組合契約は出資者の個人情報を保護し、組合全体の責任を共有する一方、任意組合契約は出資者が個別に責任を負い、契約や合意書を通じて関係を明確にするという点で異なるのです。次回のコラムでは、任意組合契約のポイントで登場した、不動産の評価方法について学んでいきましょう。
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この記事を書いた人
ファイファン編集部中の人
証券会社での飛び込み営業から不動産テックベンチャーへ転職。現在は金融と不動産、ITを掛け合わせた専門家となるべく、日々奮闘中。
FUNDING FUNDSのコラムを通じて、日本全体の金融リテラシーを向上させることが夢。趣味は街歩きとカフェ巡り。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト / 不動産証券化協会認定マスター
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