不動産投資ニュース
管理が楽になるマスターリース契約
FINDING FUNDS編集部です。
私が一人暮らしを始めたのは社会人になってからでした。いざ住まいを探そうにも、どんな条件で探せばよいのか見当がつかず、大変な思いをしました。そして、賃貸住宅で暮らしていると小さな困りごとが次から次へと出てきます。自分で解決できる内容であればよいのですが、不特定多数の人と建物を共有し、独立した部屋を使うという特性上、外部の協力が必要な場合が多いです。賃貸住宅で困ったことが起きた場合には、建物を管理している大家さん、もしくは管理会社に問い合わせをすることになります。
私が一人暮らしを始めたときにお世話になったのは、大手フランチャイズ店の不動産会社でした。諸事情があり、短期間で住まいを決めなければならなかったため、細かい諸条件を外して何とか住まいを決めました。その会社の関連会社が建物の管理も担っていたため、安心していました。築年数は7年ほどと、若い部類に入る賃貸マンションでしたが、引っ越し当初から排水溝の異臭に悩まされていました。管理会社に問い合わせをしても、返事が来るのが翌週になることが当たり前で、息苦しい生活が続いていました。
賃貸期間が2年だったため、契約更新時期を見計らって住まいを変えました。次は築3年の賃貸マンションで、大家さんも近所にお住まいになられている物件でした。気持ち新たに生活を始めたのですが、シンク下がなぜか漏水し始め、困り果てて管理会社に連絡しました。すると当日に修理業者を手配し応急処置を施し、2日後には修理を完工してくださりました。たまたま修理業者さんのタイミングが合っただけかもしれませんが、スピーディな対応が嬉しく、管理会社でこうも対応が変わるのかと感じました。
今回学んでいくマスターリース契約は、賃貸住宅を貸す側(オーナー側)、借りる側(住む人)双方に関係する契約です。マスターリース契約で関係してくる不動産会社の良し悪しによって、かつての私のように少々がっかりすることもあれば、対応に感動することも起こりえます。
マスターリース契約のメリット、デメリット
マスター(master)は”主”、リース(lease)は”賃貸借”という意味で、その名の通り、建物の主人であるオーナーから不動産会社が建物を丸ごと借りる契約のことを指します。不動産会社は第三者に貸し出すことを目的として建物を借ります。ちなみに不動産会社から第三者に貸し出すときの契約のことをサブリース契約と呼びます。マスターリース契約とサブリース契約は混同してしまいがちですが、違う契約を指します。サブ(sub)は”従属する”という意味なので、覚えやすいですね。
マスターリース契約のメリットを知るために手っ取り早いのは、不動産会社の営業マンから話を聞いてみることです。営業トークを日々勉強している彼らから話を聞くと、主には下記のような話が出てきます。
「賃貸経営をする際に、一番怖いのは空室リスクですよ!マスターリース契約を結んでいただけると、30年間は一定額の家賃をお支払いします。家賃滞納があっても問題ないですし、建物管理に関して、弊社は十分な実績があります。毎日、入居者からの細かいクレームを受け付けなくても良いですし、契約すれば賃料を受け取るだけになります。他のオーナー様も皆さん喜んでくださっておりますので、ぜひご契約ください!」
30年間、一定のお金が貰える上に、入居者とのやり取りを任せられるのは大きなメリットのように感じます。他のオーナーも契約しているって言うし、契約しようかな…と思う前に、契約の相手方である不動産会社側のメリットを考えてみましょう。
不動産会社はオーナーから借りた建物を第三者に貸し出します。そこから得られる家賃のうち、マスターリース契約で保証している金額分の賃料をオーナーへ支払います。得られる家賃とオーナーへ支払う賃料の差額が、不動産会社の儲けとなります。不動産会社は儲けを最大化させるために、家賃水準を低めに見積もったり、保証家賃を定期的に見直したり、様々な仕掛けを施すことがあるので注意が必要です。参考として消費者ホットラインに寄せられた事例を見てみましょう。
・10年前建設業者に勧誘されてアパートを建てたことに始まり、一括借り上げ、特約システム等次々に契約や費用負担を強いられる。
・アパート1棟をシェアハウスとして購入し家賃は管理会社から入金される約束だったが、入金されない。住宅ローンが支払えない。
・投資目的でアパート一棟を建てないかと誘われ土地購入と建物建築契約を締結、ローンも実行されたが事業者と連絡が取れなくなった。
信じられないような事例も挙がっていますが、最近では賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)が施行され、管理会社の業務改善が進められています。次回コラムでは、この法律について学んでいきましょう。
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この記事を書いた人
ファイファン編集部中の人
証券会社での飛び込み営業から不動産テックベンチャーへ転職。現在は金融と不動産、ITを掛け合わせた専門家となるべく、日々奮闘中。
FUNDING FUNDSのコラムを通じて、日本全体の金融リテラシーを向上させることが夢。趣味は街歩きとカフェ巡り。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト / 不動産証券化協会認定マスター
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