不動産投資ニュース
賃貸住宅管理業法により、管理業務がより丁寧に
FINDING FUNDS編集部です。
梅雨の時期が近づいてきました。雨が降り、カラっと晴れる日があると思いきや、また雨。月ごとに季節感が味わえるのは日本の良い所の一つですよね。私はこの時期になると自宅に潜む敵に頭を悩ませることとなります。
私が住むのは海辺の田舎町にある木造住宅です。築年数は30年、木造住宅の法定耐用年数は22年ですので、税法上の建物の価値はゼロの物件です。ちなみに法定耐用年数とは、固定資産を使用できる期間のことです。固定資産は購入した時から長期間使用していきますが、お金は購入したときに支払われます。個人や会社で税の申告をする場合は、1年間のお金の出入りを報告する必要があります。そこで、国は固定資産ごとに通常使われる期間を設定し、1年当たりの費用を報告することとしたのです。この法定耐用年数は、税法上の期間のことなので、この期間を超えると固定資産が全く使用できないという訳ではありません。
私の自宅も購入時に法定耐用年数を超えていましたが、建物をクリーニングし、軽く修繕するだけで使用できました。しかし、梅雨前になると困ったことに害虫被害に遭うのです。特にアリの被害は大きなものでした。すぐさま害虫駆除の業者に依頼をして、軒下に殺虫剤を撒いてもらいました。業者が言うには、定期的に薬を散布しないと害虫はすぐに出てくるとのことでした。それ以来、1年おきに軒下をチェックしてもらっています。
賃貸住宅であれば、害虫駆除のような面倒ごとも管理会社がやってくれます。ただし、過去のコラムでお伝えしたように、対処までのスピード感は管理会社によって様々です。今回のコラムでは、管理会社がより入居者にとって質の高いサービス提供を行ってもらうために、国が示している指針について学びます。
賃貸住宅管理業法に関わる2つのポイント
賃貸住宅の管理は建物のオーナー自らが行えますが、建物の規模が大きくなると専門の管理会社に依頼することが通常です。管理会社側は更なる収益獲得のためにマスターリース契約による建物一括管理を推進するようになりました。すると、契約時の説明・理解不足や管理会社によってバラつく管理の質を原因としてトラブルが続出しました。国土交通省が2019年7月に行ったアンケート調査の結果を見てみると、「特にトラブルはない」という回答が44.5%のため、残りの55.5%のオーナーは何らかのトラブルを抱えていると言えます。
建物管理に関わるトラブルを防ぐために作られたのが、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」です。この法律は2020年6月12日に成立しました。この法律が制定される前までは、賃貸住宅の管理についての法的な制約は特にありませんでしたが、制定後は大きく2つの制約が課されます。
1. 賃貸住宅管理業登録制度の創設
法第2条で、賃貸住宅管理業は、賃貸住宅の賃貸人(オーナー)から依頼を受けて、物件の維持保全、家賃・敷金・共益費・その他の金銭の管理を行う事業と定義されています。この業務について、管理戸数が200を超える事業者は国土交通大臣の登録を義務付けられることとなりました。ちなみに200戸未満の場合は任意登録となりますが、社会的信用力を確保するためにも取得することが望ましい場合があります。
賃貸住宅管理業者は、営業所又は事業所ごとに、業務管理者(賃貸住宅管理の知識・経験を有する人)を配置しなければなりません。また、管理受託契約を締結する際には重要事項を説明し、受け取る家賃は他で他の用途で利用している銀行口座と分けて管理する必要があります。1年を超えない期間ごとに管理業務報告書をオーナーに交付して説明する義務を負います。
2. 特定賃貸借契約(マスターリース契約)の適正化のための措置等
過去のコラムでお伝えしたマスターリース契約ですが、業者側が契約に係るメリット・デメリットを十分に説明しないことにより、建物オーナーが内容を誤認したまま契約締結してしまうなどのトラブルが発生しています。そのため、マスターリース契約を締結しようとする業者(特定転貸事業者、サブリース業者などと呼ばれます。)には、下記の行為規制が設けられました。
①誇大広告の禁止(法第28条)
②不当な勧誘の禁止(法第29条)
③契約締結前における契約内容の説明及び書面交付(法第30条)
④契約締結時における書面交付(法第31条)
⑤書類の閲覧
中でも注目すべきは勧誘の仕方です。広告において、「家賃保証」「空室保証」とだけ表示するだけでなく、空室の状況によっては保証家賃が見直される可能性があることや維持管理の頻度や内容を正しく表記することが義務付けられています。⑤は、業者の業務及び財産の状況を記載した書類のことで、オーナーからの申し出があった場合には閲覧させなければなりません。
以上の制約を違反した場合には、業務改善指示や業務停止処分が下されるため、業者側の意識改善が見込まれます。ちなみに先ほどのアンケート結果を受けて、国土交通省は2030年には建物管理に関するトラブル認知の割合を15%まで引き下げることを目標に掲げており、今後ますます管理会社の業務の質が高まることが期待されています。建物を貸す側も、借りる側も納得いく関係が構築できると良いですよね。
次回は読者の皆さんから寄せられた質問の中で、反響が大きかった匿名組合契約と任意組合契約の違いについて解説していきます。
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この記事を書いた人
ファイファン編集部中の人
証券会社での飛び込み営業から不動産テックベンチャーへ転職。現在は金融と不動産、ITを掛け合わせた専門家となるべく、日々奮闘中。
FUNDING FUNDSのコラムを通じて、日本全体の金融リテラシーを向上させることが夢。趣味は街歩きとカフェ巡り。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト / 不動産証券化協会認定マスター
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