不動産投資ニュース
GPIFから学ぶポートフォリオ運用
FINDING FUNDS編集部です。
岸田内閣の支持率が低下しています。NHKの7月度世論調査によると、岸田内閣を「支持する」と答えた人は38%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は41%となっています。背景には、岸田氏の長男の報道やマイナンバーカードを用いる健康保険証(マイナ保険証といいます)でトラブルが続出していることが挙げられます。更に支持率低下の後押しとなりそうなのが、6月30日に開催された政府税制調査会の中期答申で述べられた増税案です。
中期答申では、税負担を増やす対象として、退職金、通勤手当、社宅の貸与、食費の支給といった、従業員に対する福利厚生として企業が与えていた手当が挙げられています。「サラリーマン増税」という名称で連日ニュースとして取り上げられるほどセンセーショナルな話題となりました。歴史的な物価上昇が続いている最中での増税案だったため、サラリーマンを中心に反対意見が数多く寄せられています。
サラリーマンが反対する理由は、毎月のお給料にあります。実はサラリーマンが手にするお金は、会社が支給する給料から社会保険料と税金を差し引いたものとなります。この差し引いたお金のことを「手取り」と呼び、給料と手取りの差額を確認すると、どれほどのお金を社会のために納めているかを確認できます。毎月のお給料から税金を納めているにも関わらず、今後も増税が予定されているとなると、増税に反対したくなる気持ちが起こりますよね。
ただ、税金は日々の生活を安心して送るために必要なものです。ただやみくもに浪費されるのではなく、回りまわって自分の生活に還ってくるものです。今回のコラムでは、お給料にかかる負担のうち、年金として納めているお金に着目します。私たちが納める年金のうち、高齢者への年金として支払われなかった部分は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に集められます。そして、そのお金は株式や債券といった金融商品へ投資されています。私たちの将来のために積み立てられている年金が、なぜ金融商品に投資されているのでしょうか。その背景には、これまで学んだ投資の知識が活かされる理由があります。復習も兼ねて、GPIFについて学んでいきましょう。
少子高齢化問題から年金制度を守る
日本の年金は、高齢者世代を現役世代が支える制度を採用しています。つまり、私たちが働いて納めた年金が将来そのまま返ってくるのではなく、あくまで同時代を生きる高齢者のために使われます。私たちが高齢者世代となった時には、私たちの子供が現役世代となり年金を納め、その年金によって私たちの生活が守られます。ここで問題になるのが、各世代における人口です。
厚生労働省の発表によると、日本の出生数は77万747人となり、初めて80万人代を割り込みました。更に、合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの推定人数)は過去最低の1.26となり、少子高齢化が引き続き日本の大きな社会問題となっています。
「出生数、合計特殊出生率の推移」
少子高齢化が続くと、現役世代と年金を貰う高齢者世代のバランスが変わってしまいます。そうなると、「あれ、一生懸命働いて年金を納めていたのに、納めた金額より貰う金額の方が少ないぞ。」という不公平が生まれてしまいます。その不公平をなくすために、私たちの子供世代に多くの年金負担を強いてしまうと、健全な社会が立ち行かなくなってしまいます。そうならないためにも将来に不足する年金は現在の積立金で賄う仕組みとなっています。
ここで登場するのが、GPIFです。現役世代から集められた年金のうち、高齢者世代に割り当てられなかった年金は、将来世代のためにGPIFに積み立てられます。GPIFは将来の財源確保のために、この積立金を長期的に運用しています。GPIFでは、様々な金融商品に分散投資をし、それらを長期的に保有することで安定的な投資成果を出しています。まさにこれまで学んできたポートフォリオ運用を実践している公的機関なのです。ちなみにGPIFは下記の割合で投資することを基本としています。
資産構成割合を見ると、国内・国外の株式・債券を25%ずつ投資するという分かりやすい数字となっています。乖離許容幅が決められているのは、それぞれが金融商品のため日々の値動きがあるからです。GPIFはこの基本ポートフォリオの考え方に従って、約200兆円という巨額なお金を運用しているのです。最期にGPIFの昨年度の運用成果を見てみましょう。
2022年の単年で約3兆円、運用開始した2001年からの累積では108兆円という驚くべき収益額となっています。投資は長期的に、あらゆる金融商品に分散することで、安定的に収益を稼ぐことができるという証明になっているのではないでしょうか。(もちろん、相場環境が良かったからという表現も可能ではありますが。)
GPIFは、資産運用を通じて私たちの暮らしを守る活動をしていますが、更なる試みとしてESG投資を推進しています。ESG投資は、実は私たちの生活に影響するようなインパクトのある試みです。次回コラムで詳細を学んでいきましょう。
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この記事を書いた人
ファイファン編集部中の人
証券会社での飛び込み営業から不動産テックベンチャーへ転職。現在は金融と不動産、ITを掛け合わせた専門家となるべく、日々奮闘中。
FUNDING FUNDSのコラムを通じて、日本全体の金融リテラシーを向上させることが夢。趣味は街歩きとカフェ巡り。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト / 不動産証券化協会認定マスター
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